こんにちは。今日はだいぶ暖かです。上着もいらないほどですが、まだ油断はできないでしょうね。
定点観測的に今回も某公園の梅の花の画像を貼っておきます。
今回は誤嚥性肺炎完結編です。ここまで読み進めてくださった方、ありがとうございます。もうちょっとお付き合いください。
前回までをまとめると、「人は誤嚥したくらいでそうそう肺炎にはならない。弱っている人が誤嚥することによって肺炎になることがある。それを誤嚥性肺炎という。したがって誤嚥性肺炎の治療は肺炎の治療だけでなく弱っている状態も治療しなければならない。しかしながら弱っている状態にアプローチしても改善が得られないことが多い。結果として誤嚥性肺炎に対しては治療をしないという選択肢もとりうる。」ということになります。
ではいったいどうすればよいのでしょう。
答は緩和ケアにあると思っています。
緩和ケアを一言でまとめると、「生命を脅かす状態に直面した患者と家族に対し苦痛を緩和しQOLの維持向上を目指してアプローチすること。」となります。
これは、「生命を脅かす状態に直接的にアプローチしても改善が得られないことが多い。」という前提に立っていると考えることができます。まさしく誤嚥性肺炎に対するアプローチと同一です。誤嚥性肺炎患者さんは緩和ケア対象者と捉えられるのです。
誤嚥性肺炎の治療は行わない(なぜなら肺炎の治療をしてもしなくても命の長さに差がないと予測されるから)という方針は、何もしないということではなく「肺炎の治療は行わないが緩和ケア的に対処する。」という意味になるのです。
具体的に考えてみます。
誤嚥性肺炎患者さんの苦痛はどのようなものでしょうか。真っ先に思いつくのは『呼吸症状』です。息が苦しい、咳が出る、痰が絡むなどです。ありふれた症状ですが、対処は簡単ではありません。
酸素療法はいろんな意味で効果的なことが多いです(注:在宅では保険適応に問題がある場合はあります)。人工呼吸管理は効果的な場合は当然ありますが、苦痛を増強することが多い、管理に手間がかかる、長期的な予測をどう考えるか、など問題点は多くあります。
薬物療法としてはモルヒネに代表されるオピオイドがあります。呼吸困難に対する効果は実証されているところですが、非がん疾患にどう使うか課題も多いです。
口腔内、気道内吸引処置は上手に行えば有効ですが、効果が一時的であること、処置自体に伴う苦痛が非常に大きいことなどで、適応は限定的です。
誰でもできる効果的な処置としては、口腔ケアと体位ドレナージがあります。『口腔ケア』に関しては以前ブログでお話ししました。ご参照ください。『体位ドレナージ』は体の向きを変えることなどによって痰がらみに対処する方法です。非常に効果的で重要ですので、ぜひ専門家の方の解説や動画を参考にして行ってみてください。
もう一つ大事なことは、呼吸症状や発熱に対する緩和ケアとして『肺炎治療』を行うことを考える、ということです。本来肺炎の治療である抗菌療法が緩和ケアに効果的な場合はあります。誤嚥性肺炎の疾患的な治療としては片手落ちだとしても、緩和ケア的に効果が期待できるのであれば行えばよいのです。
そして、がん疾患と同様に究極的には『鎮静療法』というものもあります。生命倫理的な考察は必要ですが、苦痛緩和には効果的です。
誤嚥性肺炎を治すことはできないとしても、苦痛を軽減するための方法は様々なものがあるのです。
以上、4回にわたり誤嚥性肺炎についてつらつらと書いてみました。
最後にまとめます。
誤嚥性肺炎は起こるべくして起こる疾患ということもできます。人生の終盤で人は弱っていきます。
そして、誤嚥性肺炎は治すことのできない不治の病であることもしばしばあります。
だからこそ、誤嚥性肺炎を発症したときに、どのようなアプローチを行うか(受けたいか、受けてもらいたいか)日ごろから考えておく必要があるのです(それがACPです)。
栄養療法を十分行いながら肺炎の治療を受けるという方法もありますし、苦痛軽減を目指した行為以外は行わないという方法もあります。
大事なのは『決めること』です。決断を先送りすることは「何もしない」と決断したことと同義です。
迷ったときはTime limited trial も有効な方法の一つです(過去ブログ記事ご参照)。
苦痛を減らす方法はあります。
病院に行かないという方法もあります。
ご家族がやってあげられる効果的な処置もあります。
大事なのはQOLですね。
