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誤嚥性肺炎について(その2)~誤嚥性肺炎治療の考え方

こんにちは。

前回は春の兆しをお届けしましたが、今回は冬をお届けします。

まだまだ寒いですね。三寒四温といったところでしょうか。

くれぐれも道路状況にご注意ください。

 

前回の続きです。

 

今回は誤嚥性肺炎の対処法に関する考え方について話します。具体的な治療法についてはここでは言及しません。お知りになりたい方は専門家の方の解説をご参照ください。

 

 前回誤嚥性肺炎とはどういうものかということをお話ししました。

その中で、「人は誤嚥したくらいでそうそう肺炎にはならない」ということと、「弱っている状態で誤嚥することで肺炎になりやすくなる」ということをお伝えしました。

ここから導き出されるのは、誤嚥性肺炎の治療は肺炎の治療と弱っている状態に対する治療が必要になるということです。肺炎の治療だけを行うのでは片手落ちなのです。

 

そんなわけで、弱っている状態に対する治療について考えてみます。

弱っている状態には様々なものがあると前回お話ししました。その中で急性のもの(感冒、脱水、熱中症、低体温症、外傷など)は治療可能あるいは自然に回復することが多いですが、慢性のものは厄介です。

慢性的に弱っている状態の代表として、栄養障害について考えてみます。

 

栄養状態の悪い人が誤嚥したことにより誤嚥性肺炎になった時、肺炎の治療だけを行ったのでは治療として不十分です。栄養状態が悪いことに対して同時にアプローチしなければならないわけです。

栄養状態が悪いことに対するアプローチは主に二つです。ひとつは栄養障害の原因を探って原因に対してアプローチする事であり、もうひとつは現在発生している栄養障害を改善させることです。

誤嚥性肺炎という緊急的で重大な問題に直面しているときには、原因究明より状態改善を優先するのは当然です。

 

栄養状態の改善を目指す行為を栄養療法と言います。最もシンプルな栄養療法は『食事介助』です。何らかの理由で自力で食事摂取ができないときに、他者が食べさせてあげるのです。これで栄養状態が改善してくれたら有難いですが、そうはいかないことが多いです。なぜなら『嚥下』というプロセスが本人任せだからです。

そこで考えるのが、『嚥下』というプロセスを省いた栄養療法です。これが真の栄養療法と言ってよいでしょう。人工栄養管理という言い方もあります。

人工栄養管理は大きく二つに分かれます。ひとつは消化管を利用した『経管栄養』でありもうひとつは静脈内に栄養素を注入する『静脈栄養』です。

 

人間の体は消化管から栄養素を吸収して生命を維持するという構造になっていますから、『経管栄養』の方が生理的です。『経鼻胃管』(鼻から胃の中に管を挿入する)を利用する方法と『胃瘻』(おなかの皮膚から胃に穴をあけて管を留置する)を利用する方法が代表的です。

簡便なのは『経鼻胃管』を利用する方法です。すぐに開始することが可能です。ただ、問題はあります。管の出し入れや留置による苦痛、管の肺への誤挿入、管が細いため注入に限界がある、新たな誤嚥を発生しやすい、などです。

『胃瘻』は造設の侵襲はあります(一般的には内視鏡を使って行います)が、そこさえ乗り越えればあとは非常に優れています。苦痛が少なく、管によるトラブルが少なく、注入も容易です。長期間の栄養管理を要すると考えられる場合は『胃瘻』を第一選択にするべきです。

 

十分な量の栄養素を静脈から注入するためには心臓の近くまで静脈内に管を入れる必要があります。『中心静脈栄養』と呼んでいます。

『静脈栄養』は特殊な方法です。本来無菌であり血液以外存在しない血管内に管を入れ外界とつなぐわけですから、様々なリスクを伴います。何らかの理由で消化管が機能しない場合(腸閉塞など)に限定するべきです。

「胃瘻は嫌だけど点滴ならいい」といった考え方がありますが、基本的に誤りです。

 

では、誤嚥性肺炎の患者さんに実際にどのような栄養療法が行われているでしょうか。

実は「栄養療法は行わない」というのが多数だったりします(理由については次回お話しします)。栄養療法を行わないばかりか、『絶食』にすることで栄養状態をさらに悪化させてしまうこともあります。治療提供側に様々な事情があるのは確かですが、一律に絶食にすることは有害であることが医学的に示されています。

 

今回はここまでにしておきます。

次回は『誤嚥性肺炎のリアル』についてお話ししようと思います。