こんにちは。
毎日寒い寒いと言いながら過ごしているのもつらいので、ちょっと春の気配をお届けします。梅は咲き始めていますね。
さて、今日はちょっと医学的な話をします。と言っても、専門的な話ではありません。一般の方にもわかってもらえる(わかってもらいたい)話です。
『誤嚥性肺炎』という言葉は聞いたことがあると思います。われわれも医学用語としても、日常的な用語としても頻繁に使用しています。
今日は『誤嚥性肺炎』について掘り下げてみます。長くなりそうなので、何回かにわたってお話ししようと思います。
「誤嚥性肺炎とは誤嚥によって発生した肺炎である」と考える方が多いかもしれませんが、そう簡単なものではありません。
鶏が先か卵が先か的な話ではありますが、まず肺炎の患者さんがいて、その肺炎の発症に誤嚥が影響したと思われる場合を誤嚥性肺炎と呼んでいるのです。誤嚥して肺炎になったかどうかではなく、肺炎の発症に誤嚥が影響したかどうかなのです。
医学・医療で最も重要なのは「病気がよくなること」です。『誤嚥性肺炎』を普通の肺炎(一般的な肺炎は『市中肺炎』と呼んでいます)とわざわざ区別するのは、誤嚥が影響したと思われる人の肺炎は、その後の経過が一般的な肺炎より良くないことが多いからです。
誤嚥性肺炎の方には市中肺炎の方とは違った特別な配慮が必要なのです。
『誤嚥』とは何か、どうして起こるのか、についてはここでは詳しくは触れませんが、「嚥下の際に異物が気管内に入り込むこと」と理解していただければ結構です。
誤嚥は頻繁に発生しています。それこそ僕にもあなたにも。毎日毎日何百回、何千回と誤嚥している方もいます。気づかないうちにとか、眠っている間にも発生します。人間は構造的に誤嚥しやすい動物なのです(言語コミュニケーションが発達したからと考えられているようです)。
ここで大事なのは『誤嚥したぐらいでそうそう肺炎にはならない』ということです。これ重要です。
ちょっと笑い話的な例え話をします。
肺炎の人が10人いたとき、調べてみるとそのうち5人は前の晩に晩酌をしていたとします。そして肺炎の治療を行ったところ、晩酌をした5人の方が晩酌をしなかった5人より治りにくかったとしたらどうでしょう。「前の晩に晩酌をした人の肺炎治療は難しい」となるわけです。そして「晩酌性肺炎と命名しよう」となるのです。
その先が問題です。「晩酌をすると晩酌性肺炎になるから晩酌はしてはいけない」という考え方が発生してしまします。何バカなこと言ってるんだ、というところですが、似たようなことは誤嚥性肺炎治療の現場で発生しています。後で話します。
誤嚥が影響して肺炎を発症してしまう人と、誤嚥しても肺炎にならない人の違いは何でしょうか。
大雑把に言ってしまうと「弱っている人が誤嚥すると肺炎になりやすい」ということになります。そこで『弱っている』とはどういう状態かということが重要になります。
急性的な問題と慢性的な問題があります(そしてしばしば複合的です)。例えば風邪をひく(ウイルス感染)だけで人は弱ります。特に重めの風邪(インフルエンザやコロナ感染など)にかかると、かなり体調が悪化します。そんなときに誤嚥が引き金となって肺炎になったりするわけです。
その他にも急性的なものとしては、冬場の低体温とか、夏場の熱中症とか、食あたりとか、脱水とか、転んでけがしたとか、腰痛で起きられないとか、睡眠薬を飲んだとか、いろんなものがあります。
慢性的なものとしては、慢性的な臓器機能障害とか、難病とか、進行癌とか、重度の認知症とか、栄養障害とか、非常に多くのものが影響します。そしてもうひとつ重要なのは『老衰』です。
ここまででお分かりのように、誤嚥性肺炎においては『誤嚥』自体よりも『弱っている』ということがより重要なのです。だからこそ一般的な肺炎より経過が悪いことが多いわけです。
ではどうすればよいのか?
次回お話しします(乞うご期待)。
最後に重要なことをもう一度言っておきます。『人は誤嚥したぐらいでそうそう肺炎にはならない』
