こんにちは。
酷暑ですね。なんとか無事に乗り切りましょう。
今日の一枚は奥多摩の日原鍾乳洞です。中はとても涼しいですよ(ライトアップはちょっと微妙です)。ただ、アップダウンがきつくて結局汗が出ますが。
今回は前々回からの続きです。
前々回、前回と通常医療を慢性期医療と急性期医療に分けて考えてみました。今回は通常医療とは異なる医療である緩和医療について考えてみます(今回が本題です)。
ちなみに通常医療と緩和医療の違いは何かというと、アウトカム(到達目標)の設定の違いです。通常医療は『生きる』ということをアウトカムにしていますが、緩和医療では『QOLの維持向上』をアウトカムにしています。ですから、アプローチの仕方が根本的に違うのです。
緩和医療には通常の慢性期医療と同じく一定の期間ごとの診療が必要です。ただ、きめ細やかな薬剤調整が必要だったりするので、診療のサイクルは通常の慢性期医療に比べてかなり短くなります。緩和医療には通常の急性期医療のように24時間対応が必要です。いつ何時苦痛が増強するかわからないし、新たな苦痛が発生することもしばしばあるからです。そして、その緊急的な対応は対象となる病態の延長線上にあり、連続的であることもあります。
通常の医療における慢性疾患の急性増悪も対象となる病態の延長線上にあるわけですが、アプローチの仕方が異なります。慢性疾患の急性増悪は非常に重篤な状態(criticalな状態と表現します)であることが多く、『生きる』ことを一義に目指すのであれば専門的な急性期医療(critical care)が必要になるので、慢性期医療担当者の役割ではなくなります。
Homeboundな状態の人に緩和医療が必要であるなら、それは訪問診療医が請け負うべきです。そして緩和医療は慢性期医療と急性期医療に分けて対応することはできません。したがって、訪問診療医には24時間対応業務が発生するわけです。ここが在宅医療のキモです。先ほど述べた慢性疾患の急性増悪においても、通常医療としての急性期医療を行うのではなく緩和医療で対処するのであれば、それは訪問診療医の仕事ということになります。ただ、アプローチの仕方が違う(『生きる』ことよりも『QOL』を優先する)という共通認識を持つ必要がありますが。
考え方を整理するためにまとめてみます。
・Homeboundな人は慢性期医療が必要であることが多く、訪問診療で対応されることが望ましい。慢性期医療自体には24時間対応は不要である。
・すべての人に急性期医療が必要な事態が発生することがあるが、通常は自分で判断して行動することになる。Homeboundな人は適切な判断と行動ができないことが多いので、急性期医療を在宅で行うという考え方(Hospital at Home)は理にかなっている。これは慢性期医療とは分けて対応することが可能である(望ましい)。
・Homeboundな人に緩和医療が必要になった場合、訪問診療で対応することが望ましい。緩和医療では日常的な医療と緊急的な医療が連続的であることが多く、訪問診療担当者が24時間対応することが必要になる。通常の医療のように慢性期医療と急性期医療を分けて対応するべきではない。
いかがでしょうか。うまく伝わったでしょうか。
言いたいことを言ったついでに同業者に向けて少し毒を吐きます。
できもしないのに急性期医療を訪問診療医が請け負うべきではありません。
急性期医療の部分を他者(急性期病院、往診専門業者など)にゆだねるという考え方は妥当ですが、それなら高額な診療費(管理料)をもらうべきではありません。
緩和医療には24時間対応が必要です。緩和医療を請け負っているなら時間外の対応を他者(特に往診専門業者)にゆだねるべきではありません。
2025年問題が終わり、2040年問題に向かって本格的に進み始めた現在、在宅医療・訪問診療の役割は大きくなっています。そして新たな転換期を迎えているのだと思います。急性期医療を在宅で行う方向に向かうのは結構なことですが、その前に整理しておくべきことがあると思います。
