こんにちは。
秋真っ盛りですが秋晴れの日が少なくてさみしい感じですね。
今日は往診について考えてみます。
往診という言葉はご存じだと思いますが、訪問診療と往診の違いをご存じの方は少ないかもしれません。
(狭義の)訪問診療というのは事前に計画を立てて予定を告知したうえで患者さん宅に訪問し診療を行うことであり、往診というのは患者さん側からの要請に応じて臨時に訪問し診療することです。
緊急往診という言葉もありますが、広義には日中(診療時間内)に発生した生命にかかわりかねない緊急事態に対し迅速に訪問することと夜間休日に訪問することを意味しています。
24時間対応を行う在宅医療には必要不可欠な行為です。
ものごとには常に二面性(良い面と悪い面、プラスとマイナス)があります。当然この往診という行為にも二面性があります。そのことについて考えてみます。
往診(特に緊急往診)を評価する際には、三つの視点・評価軸があります。
・患者さん・家族さん、およびその患者さんの在宅療養を支援する他職種の皆さんからの視点、
・往診を行う医療機関からの視点、
・社会的な視点、です。
これらについて少し深堀してみます。
まず最初に社会的な視点について考えてみます。
在宅医療を提供する医療機関がちゃんと診療を行っているかどうかの評価基準として、この緊急往診の件数が使用されています。患者さん側から要請があっても往診しない(特に夜間休日)のはけしからん、往診もせずに119対応に委ねてしまうのはもってのほかだ、という理屈です。ですから夜間休日の往診に対しては手厚い報酬があり、一定の件数以上の往診を行うことに対しても高評価がなされます。
これ、半分は正しいです。でも、半分は間違っています。
いつの時代にも頭のいいひと(=ずる賢い人)がいます。この手厚い報酬、高評価を商売の具に使ったりするのです。
よ、商売上手!(褒めてません)
次に患者さん側、あるいは在宅療養支援スタッフの皆さんからの視点で考えてみます。困ったときに往診してくれるかどうか(その前にいつでも連絡がちゃんと取れるかどうかも含め)がまず第一の評価基準になります。いつもの主治医が迅速に訪問してくれて、的確で誠実な診療をしてくれたらプラスポイントになります。一方で、往診に来たのが見ず知らずの医師だったり、病状について全く知識がなかったり、対応が誠実さを欠いていたりするとマイナスポイントになります。
これらの評価基準は当然と言えば当然ではありますが、適切かというとそうでもない場合もあります。いつもの主治医が24時間365日迅速に往診するなんていうのは不可能ですし、緊急性の乏しいコンビニ的な要請の場合もあったりします。先ほど書いた商売上手な人たちとwin-win な関係を築くこともあります。
難しいところです。
往診を行う医療機関側の視点で言うと、そもそも往診件数が多いというのは診療の質が低いことの現れだと考えたりします。往診が必要にならないようにふだんの診療を丁寧に行うことこそが重要だともいえるのです。
そして、夜間休日は休みたいという本音もあります。体がもたないという問題もあります。そこで、夜間休日の往診は当番制にしたり、金銭を払って外部委託したりもします。これは悪いことではありません。むしろそうするべきとも言えます。当番医さんや往診専門業者からの派遣医さんの方が、自分が往診するより診療の質が上がることも十分に考えられます。
一方で、本当に必要な時にちゃんと主治医が自ら往診することで、患者さん・家族さん、さらには他職種の皆さんからの信頼を勝ち取ることができるという面もあります。結果的にそれ以降の診療がスムーズにいく場合もあります(逆に、要請に対し往診の必要はないと判断し往診しなかったために信頼関係を損ねることもあったりします。難しいところです)。
往診というのは在宅医療において必要不可欠な行為ですが、その評価はとても難しいのです。
また長くなってしまいました。この辺にしておきます。