こんにちは。
9月半ばを過ぎたというのに、なんでしょうこの暑さ。削られますね。
今日は業界関係者にしか伝わりづらいモヤモヤについて考えてみます。
緩和ケアと在宅緩和ケアって別物だと思うんです。もちろん重なる部分が大きいことは当然ですが。
今日はそんな話です。
そもそもの緩和ケア(=狭義の緩和ケア)は病院医療の延長線上にあるのだと思います。ということは在宅緩和ケアは在宅医療の延長線上にあるわけです。どちらも『ケア』と称している以上、医療にはとどまらず、もっと広い概念を有しています。
緩和ケアは「苦しんでいる人を何とかしてあげたい」という思いから発生しているわけですから、狭義の緩和ケアも在宅緩和ケアも、根っこのところは同じなはずです。根っこは同じだけど、対象とする集団が違う、その後のアプローチの仕方が異なるということなのかもしれません。
在宅緩和ケアは、『在宅療養の中で』という大前提があります。
すべてのケア(医療行為も、看護行為も、介護行為も、リハビリテーションも、その他すべての在宅患者さん・利用者さんに向けて行われる行為)は「在宅療養を行う上でどうするか」ということを前提にしているわけです。その前提はケアを有利に進められることにもなるし、逆にケアに縛りを与えることにもなり得ます。要するにプラスにもマイナスにも作用しうるわけです。
結果的に個々の患者さん・利用者さんによって全く異なるケア、アプローチが必要になります。Aさんにはこういうケアが効果的だけれど、Bさんに対してはそのケアは苦痛を増強させてしまう、ということも発生します。なぜなら在宅療養の環境は本当に人それぞれだからです。
そんな状況を踏まえて、「在宅緩和ケアとは何か」を語るのはとても難しいことです。
誰にでも通じる非常に抽象的な根源的なことを語るか、あるいは個別的な具体的なケーススタディとして語るか、どちらかに振れざるを得ないのです。そして、A医師とB医師では言ってること、やってることがだいぶ違う(もちろん根っこの部分は共通しているはずですが)ということが起こってきます。どちらが良いとか、どちらが優れているとかいうことではないのです。どちらも個々の患者さんに適応させようとした結果だからです。
そんなわけで、「緩和ケアについて語ろう」という場で、前提を確認せず狭義の緩和ケアと在宅緩和ケアをごちゃまぜにして話すと、話がかみ合わなくなります。聞いている方々も、ご自身の立ち位置によって受け取り方が変わってきます。
僕は在宅医なので、僕の提供する緩和ケアは『在宅緩和ケア』です。
患者さんの在宅療養環境をよく観察して、その方に適した在宅緩和ケアを提供するよう努めていますが、最初の観察が適切に行えていないと、それ以降どんなに頑張ってもうまくいかないことがあります。患者さん・家族さんのQOLの維持向上を目指しているのに、QOLを下げてしまうことすらあるのです。緩和ケアの教科書では正しいとされる王道の行為を行ったとしてもです。
そんなときは、「緩和ケアと在宅緩和ケアはやっぱり違うんだ」と反省したりします。自分の力不足を痛感して凹んだりします。このあたり狭義の緩和ケアを専門にしている皆さんにはわかりづらいことでしょう。
関係者にしか伝わりにくい話題で恐縮です。
最後に関係者の皆さん向けに一言添えさせていただきます。
在宅緩和ケア提供で悩んだ時は、一歩引いて(患者さん・利用者さんのお宅から外へ出て、空を眺めながら)在宅緩和ケアの根本にある抽象的な部分、すべての関係者と共感できる部分、広義の緩和ケアの真髄の部分、をもう一度自分の心の前面に押し出してみて、それを自分の行動理念として再確認して、できればそれを言語化したりして、過ごしてみてください。同業者と語り合うのもよいでしょう。
心のモヤモヤが少しは晴れるんじゃないかと思います。
(ご希望の方がいらっしゃったら一緒に語り合いましょう。)