こんにちは。
お盆が過ぎても暑さは変わらず続いています。そんな中コロナウイルス感染者も増えているようで、気が抜けません。
今日は在宅療養生活・支援に欠かせない福祉用具について考えてみます。
介護保険についてはみなさんご存じでしょうし、このブログを読む方のほとんどは介護保険サービスの利用者か提供者のどちらかだと思います。
介護保険制度についてここでは詳しくは語りませんが、いつも本当にお世話になっているあれとこれについて感謝を込めて話してみます。それは介護ベッドとエアマット(正確にはエアマットレスでしょうか)です。
訪問診療を開始するとき、まずご自宅の療養環境の確認を行います。
もちろん介護職の皆さんは既定の評価基準にのっとってそれを行う(家屋調査と言います)わけですが、われわれ医療者はもう少しラフにあるいはより現実に即して、さらには疾患・病態による生活動作への影響を考慮して、評価します。
訪問診療対象者の多くは、日常生活動作になにがしかの不便性を感じています。それに対し残念ながら医療行為としてできることは限定的(鎮痛療法などの対症療法が主体)です。
そんなわけで、療養環境の改善、利便性、さらには居心地の良さを目指して適切な福祉用具の導入を行うわけです。まずは何はともあれ休息の場所(すなわち寝る場所)の整備です。僕は東京都内で勤務しているので、それほどクラシカルな、純和風なお宅はありません。昔ながらのお布団を敷いて寝ている方は少数派ですし、万年床かつせんべい布団のお宅はほとんどお目にかからなくなっています。ベッド利用者が多数派ですが、療養に適したベッドを使っているわけではありませんね。ベッドは純粋に寝るための場所ですから当然です。
そこで介護ベッドの出番です。
介護保険を利用して介護ベッドを借りるには条件(要介護2以上)がありますが、要介護1でもわれわれが見て介護ベッド利用が望ましいと判断した場合は申請により利用することができます。
この10年ほどを振り返ってみても、介護ベッドはかなり進化しています。相当使いやすくなっています。当然お値段も高いわけですが、介護保険で借りられたなら、その超高級ベッドに格安で毎日寝られるわけです。有難いことです。
どのような機種を選ぶのがよいかをここでは論じられませんが、ひとつだけ声を大にして言いたいことがあります。それは、『介護ベッドは家の中で一番居心地がいい場所に置きましょう』ということです。
療養生活において、単にベッドは睡眠をとる場所ではなく、過ごす場所です。もちろんベッドから簡単に降りられる方はよいのですが、なかなか降りられない方にとってはほぼ生活の場所ということになります。
そうなると、いわゆる寝室に介護ベッドを置くのではなく、居間(リビングルーム)に置いた方がよい、ということになったりします(もちろん家族間のプライバシー確保は考慮しなければいけませんが)。
さらに言うと、ベッドは壁際に置くのではなく、部屋の真ん中に置くべきです。ベッドの周りをぐるっと回れるようにしておくことをお勧めします。これ結構重要です。ケアのしやすさがぐんと上がります。
もう一つはエアマットです。
自力で起き上がるのが難しい状況の方には必須のアイテムです。主な機能は体圧分散ですが、体圧分散が褥瘡(床ずれ)発生予防に効果的であることは科学的にも認められています。
この10年ほどでのエアマットの進化も目を見張るものがあります。自動体位変換機能や除湿機能なども装備されるようになっています。これらにより(注:その他にも看護系の皆さんの並々ならぬ努力もあります)、褥瘡の発生頻度は格段に低下しています。在宅医の主業務の一つであった褥瘡処置は、過去のものとなってきました。本当に有難いことです。
使い慣れた布団、ベッドがいい、という気持ちはよくわかります。ただ、それはあくまでも睡眠をとるという目的においてのことだと思います。
在宅療養は生活です。安静に寝ていることだけが目的ではありません。最も大事なのは心地よく過ごすことです。そのために使える制度を十分に使いながら療養生活を送っていただきたいし、支援していきたいと思っています。