こんにちは。
GW真っ只中です。昨日は土砂降りで今日は晴天です。休日を満喫している方が多いことでしょう。
お仕事中の方は、お疲れ様です。
前回のブログで西東京市訪問診療連絡会の話をしました。
同業者が集まると、『世代交代』ということを強く意識します(させられます)。
今日はそんな話をしてみます。
『世代』という言葉はいろいろなところでいろいろな意味で使われています。生活面では世代とは親と子の関係ということになりますが、仕事面では10年ないし12年(干支の一周分)を一世代と考えることが多いのではないでしょうか。今回はその感覚でお話しします。
自分は訪問診療専門になってから15年ほど経過していますので、だいたい一世代分は過ぎたと思っています。ずいぶんやってきたんだなあと感慨深いものもあります。
そこで、訪問診療・在宅医療に関しての『世代』というものをちょっと考えてみます。
『往診』という診療形態はずいぶん前からありますが、診療の場を在宅に置き定期的に訪問するという意味での『訪問診療』が認知され広まってきたのはだいたい2000年前後だと思います。現在から考えると、ざっくり2世代前から始まったと考えてよいでしょう。自分目線で考えると、自分より上に訪問診療を作り上げた世代(第一世代と言ってみます)がいて、それを引き継いだ自分たちの世代(第二世代ということになります)がいて、現在主戦力になっている世代(第三世代ですね)がいる、という感じだと思っています。
医師とういう職種は定年退職という概念が(ほとんど)ないので、70歳を過ぎても現役であることは当たり前だったりします。訪問診療の世界でも、第一世代の方々はまだまだ現役で活動されていることが多いです。頭が下がります。
第一世代は何と言っても訪問診療・在宅医療を一から作ってきたわけで、そこには並々ならぬ努力があったものと思われます。個の力がとても重要だったわけです。そこで活躍された方々は今でもレジェンド、カリスマとしてリスペクトされています。
当然ですが、時間の経過とともに時代は移り変わっていきます。世代交代は世の常です。
世代が変わるときの特徴は「前の世代の良いところを引き継ぎ、悪いところを否定する」ということだと思います(ここで重要なのはその善悪の判断は必ずしも正しいとは限らない、むしろしばしば間違いを含んでいるということです)。
第一世代の方々は、訪問診療・在宅医療を作り上げる際、「在宅療養は素晴らしい」ということを強くアピールされました。その流れの中で「病院は在宅より劣っている」「在宅で最期まで過ごすべきだ」「入院などしてはいかん」というような趣旨の発言もみられていました。
そう言われると第二世代の我々は反発・否定したくなります。「在宅が重要なのではなく本人・家族の意思が重要なのだ」と主張します。これはパターナリズムの時代からACPの時代への変遷に当たるのかもしれません。
そんなわけで第二世代は患者さん・家族さん、そして関係する多職種のスタッフの皆さんとよく話し合って方針を決める、ということに重きを置くようになります(だから話が長いのかもしれません)。そこでの評価軸はQOLが最優先であり、「在宅療養はあきらめる」という結果に至ることも当然あったりします。
また、第一世代の方々が築いてきた「24時間365日主治医が支援する」という気概は第二世代も引き継いでおり、24時間365日オンコール体制という勤務形態が踏襲されてきました。かく言う自分もそんな勤務形態を今でも維持し続けています。
そして今日活躍中の第三世代の登場です。
第三世代の最大の特徴は何と言っても『グループ診療』だと思います。
24時間365日の療養支援をどう行っていくか。第一第二世代はそれを個の力でカバーする事にこだわってきたため、そこには大きな足かせや参入のハードルが発生してしまいました。さらに個の力には限界があることも改めて認識されるようになり、診療の質にも疑問がもたれるようになりました。
近年の働き方改革・ワークライフバランス・SDGsなどのムーブメントも相まって、24時間365日の療養支援はグループで行う、アウトソーシングするという方向性が主役になりました。ICTの発達(SNSの利用、オンライン・リモートでの作業、クラウド型電子カルテの導入など)により主治医以外の人間が対応することによる質の低下を防ぐ工夫がなされています。
時代は変わります。必ず世代交代は起こります。現実は、そんなにドラスティックではありません。グラデーションをもって変わっていきます。
人は次の世代に移ることはできません。できるのは次の世代の良いところを取り入れ悪いところを否定するということだけです。ちょうど自分たちが上の世代に対して行ってきたように。
必要なのは柔軟性でしょう。
長文失礼しました。