勉強会報告「輸液の話」

こんにちは。

本格的に寒くなってきました。東京もいつ雪が降ってもおかしくない空模様です。

 

勉強会の報告です。

今回は「輸液の話」でした。

介護職の皆さんにもわかってもらえるよう噛み砕いて話したつもりですが、浸透圧とか等張液とか細胞外液とか、どうしても「なにそれ?」的な事柄になってしまうのが悩ましいところです。

最も伝えたかったのは、「その輸液は何のために行っているのか考えましょう」ということです。

そして「その輸液が苦痛を増やしている可能性がある」ということを常に頭に思い浮かべるということです。

 

たとえば「維持液」という輸液があります。これは一日に必要な電解質(一日に失われていく電解質)を補充する、という目的で作られたものです。

理屈では(生理学的には)この輸液を2000ml毎日投与することで補充できることになっています。

しかし、その通りに毎日2000ml輸液したらどうなるかご存知ですか?

必ずむくみ(浮腫)が出現します。

 

終末期に限定して言えば、2000mlよりもっと少ない量の輸液でもむくみが出現します。

理由はおもに栄養状態の低下(低たんぱく血症)と代謝機能の低下によるものであり、それらは解決不能な問題です(これらが解決不能であるということこそが終末期であることの証明でもあります)。

過剰な輸液はむくみ以外にもいろいろな有害作用をもたらします。胸水・腹水の増加、気道分泌の増加なども加わり、呼吸負荷(呼吸運動という仕事の増加)をきたし苦痛が増強します。

結果として体力低下、ひいては生存期間の短縮につながるかもしれません。

 

そして、患者さんのお顔が・体がひどくむくんでいるというのは見ていてもつらいものです。

もちろん避けられないむくみというものもありますが、医療者は可能な限りむくみを減らす努力をするべき(あるいはむくみを作らないよう全力を尽くすべき)だと考えています。

 

終末期の輸液は生命延長効果は期待できず、苦痛軽減効果も認められていません。のどの渇きをいやす効果も認められていません。

本当の最期の時が近づいたら、有害な輸液は行わない(あるいは輸液量を最小限にする)という対処が緩和ケア的には必要です。穏やかで身軽な最期の時を過ごしていただきたいと思っています。

 

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